ふぐの免許制度とは
猛毒を含むフグの取り扱いはふぐ調理師・ふぐ処理士・フグ包丁師など様々な名称で各都道府県で資格制度を設けて試験を実施、合格したものにだけその自治体での取り扱いの許可を与えるように仕組みを作ってきました。
最も難しい「ふぐ調理師」試験制度とされる東京都の「ふぐ調理師試験」では都内のふぐ料理店の関係団体として東京ふぐ料理連盟、東京ふぐ料理研究会、みなとふぐ料理組合、浅草ふぐ料理組合、東京ふぐ卸売協同組合が東京都ふぐ取扱業組合連合会を設立、東京都の料理店に対する指導の受け皿としてだけでなく、ふぐ調理師免許の試験制度の屋台骨を背負ってきています。また、東京ふぐ料理連盟では池袋・後藤学園で学生に年一回の調理講習会を開催する他、東京都の試験前に模擬試験も実施、受験者に対する除毒技術・鑑別の指導がきめ細やかに行われています。
が、反面で都道府県でこの資格制度に対しての温度差は大きく、講習会のみで資格を認めるところもあります。フグの養殖が海面だけでなく内水面でも行われるようになり、これまでフグ食文化が存在しなかったエリアでもフグを食べる食文化が形成されつつあること、そして地球温暖化によるフグの生息域変化から交雑種発生もより複雑になっていることを踏まえ、都道府県でバラバラだった資格制度の基準を統一する必要が求められていました。
また、兼ねてから問題視されてきたが、都道府県で資格制度が違うためにいずれかの自治体で有資格者が他県でフグの取り扱いを希望しても他県でもう一度資格を取り直さなければなりません。一部都道府県間では免許の相互乗り入れを実施、相手の自治体の資格者受け入れなどを進めておりましたが、多くは資格を取り直す必要があり、こうしたバラバラの資格制度が都道府県間の流通でも大きな双璧となっていました。海外へ輸出する動きも早くから見られていましたが、日本としての統一の基準がないことで相手国も輸入時の基準の設定が難しかったことなどもあり、多くの国では日本からのフグの輸入を禁止してきました。輸出を促進し、日本のフグ食文化を発信していく意味でも免許・資格制度の統一は必ず達成しなければなりませんでした。
このため、厚生労働省は業界・専門者との協議を重ね、2019年10月31日に「フグ処理者の認定基準」についての通知を発出し、都道府県のフグ処理者の資格について一律の基準に設定することを求めました。今後は都道府県間の調整も進んでいくと想定されますし、これにより近い将来、全国統一の免許・資格制度も統一する方向に向かうものと期待されます。