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執筆者の写真小野 晶史

2020年1月号社説:現状の不満の解決を非合法な手法に頼ることの愚/日本の司法制度批判の無意味さ─ 2020年冒頭にメディアを賑わせたニュースで思うこと ─

2020年は東京オリンピック・パラリンピックを控え、日本にとって重要な一年となる。訪日外国人観光客の大幅な増加が見込まれ、消費の盛り上がりも期待される。特に日本の水産物を海外にアピールするまたとないチャンスであり、日本でしか味わえない美味しい魚介類を広く知ってもらえるよう、様々な取り組みが期待される。


その一方で年末に残念なニュースが飛び交った。元日産会長のカルロス・ゴーン氏の国外逃亡事件だが、気になるのはその事件に対する識者やジャーナリストのコメントだ。多くのメディアではゴーン氏の行為を非難しているが、一方で日本の司法制度に対する批判を絡めながら微妙にゴーン氏の犯罪を擁護しようとする動きが見られる。


日本の検察を含めた司法制度のあり方に不満を持つ日本国民がいることは容易に想像できるし、その気持ちは理解できる。しかし、それが犯罪の擁護に繋がるような論調となるのであれば、そうした意見は真っ向から否定したい。ゴーン氏はこれからも日本の司法制度を否定することで自らの犯罪をなきものにしようとするのであろうが、そういう姿勢は断じて許されるべきものではない。


今回のゴーン氏の犯罪は日本にとって大きな課題を投げかける。日本においても今の様々な法制度や規則に対して不満を持つ方も多い。現状を変えたい思いは日本を良くすることにも繋がるだろうし、そうした志は非常に素晴らしい。が、かと言って、現場を変えられない不満を結果的に非合法な犯罪行為に頼って解決しようとすることは愚かと言わざるを得ない。現状を変えるためには何をすべきか、粘り強く取り組み、政府を動かし、非合法な手法に頼らずに変えていくべきなのではないだろうか。


無論、こうした理想論は平時においてしか効力を発揮しない。ただ、平時である限り、法治国家で民主主義国家である日本で法制度を変えたいのであれば、時間はかかるが、正しい手順を踏んで現状を変えていくべきだろう。非合法な手法に手を染めた人間が何を言っても変えられないし、支持を得られない。ゴーン氏の犯罪行為は様々な意味で残念だし、ゴーン氏が変えようとした(と信じたい)日本の司法制度の変革は大きく後退していくのではないだろうか。

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