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執筆者の写真小野 晶史

2020年8月号社説:取材では双方の丁寧なコミュニケーションが必要/受けた取材通りの報道となることはないと考えるべき─ 大手メディアの取材について思うこと ─

「取材」は本当に難しいと思う。常日頃から取材対象者とコミュニケーションをとっている業界紙ならまだ良いが、大手メディアとなると「一過性」の取材となるため、得てして取材対象者との事故が起きやすい。


取材する側と取材される側で考え方が違うことは当たり前だが、取材する側は常に取材対象に自分の取材の意図をきちんと説明しなければならないし、コミュニケーションをしっかりと取り続けていく必要がある。その責任は紛れもなく取材する側にあると言える。


そうはいっても取材過程での事故はよく起きる。何が問題なのか。やはり取材する側が取材対象者の気持ちを汲み取れていないことが大きいだろう。取材する側が「きちんと説明している」と思っていたとしても、取材対象者とズレが生じてしまう。大きな取材であればあるほどそのズレは非常に大きなものとなってしまう。


ではどうすればいいのか。取材する側は「取材をさせてもらえる」立場であることをしっかりと認識しつつ、「ここまで説明してもらえるのか」というところまで取材対象者に説明をするべきだろう。「取材させてもらえる」ということへの感謝を軽々しく考えると説明も疎かになり、取材対象者との誤解が生じかねない。取材する側が「最初に説明した筈」と言っても意味はない。結果的に取材対象者に取材の意図を理解させられなかった取材者の落ち度と言える。


取材する側は謙虚に「取材させてもらえる」と考えなければならない。取材対象者の貴重な時間を割いてもらい、大切な情報を得ることへの感謝を忘れると事故は起きやすくなる。以前、大手テレビ局の記者で、取材するにあたり「恫喝」という手法を平気で使っていた人を覚えている。その人物はテレビ画面では一切そうした姿を見せなかったが、取材交渉の過程で口汚く取材対象者である相手を罵り、怯えさせ、取材に応じさせていた。


そこには取材させてもらえることの感謝は微塵も感じられない。マスメディアの末席を汚す私ではあるが、「取材してあげた」とか「記事にしてあげた」というようなことを考えるのではなく、謙虚な姿勢で常に取材対象者に臨む姿勢を

貫いていきたい。


また、取材対象者となる方々も自己防衛が必要になることは間違いない。取材されている方は決して今受けている取材がそのまま報道されることはなく、取材する側の意図で取捨選択された情報が切り貼りされて報道されることを理解しなければならない。ニュースが世に出たら基本的に修正は効かない。記者とは最後までコミュニケーションを密に取っていくことを勧めたい。

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