• 小野 晶史

2021年10月号社説:県別採捕量を把握せずに国内採捕管理はできない/如何に県別実績をチェックするかがポイントに─ これからの国内シラス採捕システム整備で思うこと ─

水産物流通適正化法でシラスウナギが特定第1種水産動植物に指定されたことで最も影響を受けるのは国内のシラスウナギの採捕流通制度となる。日本政府が輸入シラスウナギも含めて日本国内で流通する全てのシラスウナギに原産地証明書の提示を求めることに対し、中国や台湾等がジャポニカ種・ロストラータ種を含めた全種のシラスウナギの原産地証明書を添付することは可能と見るが、一方で肝心の日本で採捕されたシラスウナギに対する原産地証明書添付の見通しは非常に厳しい。


特に、日本で採捕されるシラスウナギでIUU漁業排除の観点から最も問題とされるのは「未許可(密漁)」よりも「未申告」分の排除と言える。もとより密漁自体は厳しい監視体制のもとで排除は可能だし、現在でも「密漁が横行している」という指摘は現場の実態とかけ離れたものとして首を傾げざるを得ない。何よりも重要なのは「未申告」の発生だが、これは漁業者の問題ではなく、浜の元締めであるブローカー(シラス問屋ではない)の存在が大きい。そもそもシラスウナギの漁業者が採ったシラスウナギを横流しするケースは少ないと見るべき。そしてシラス問屋でもその原産地を誤魔化して販売しようとすることはリスクが大きいため、一部の悪意ある問屋を除いてそうしたケースは決して大きくないと見るべきだろう。問題となるのは採捕者と直接繋がりを持つシラスウナギのブローカーと言える。


元々、シラスウナギ問屋の多くが個々の採捕者と直接接点を持つことはなく、仕入れの大半を浜でシラスを集荷するブローカーを経由する。ブローカーの中には採捕地などの履歴を明らかにしないだけでなく、取扱数量も申告しないケースがあり、今回のようなケースで実際の採捕量と申告量の乖離を指摘されてしまう主な原因となってしまっている。


今回の漁業法改正でシラスウナギ漁は2025 年には許可漁業へ移行する。あくまで行政の温度差もあるが未申告の業者をどこまで管理できるかがポイントとなる。シラスウナギ採捕量の申告数が実際の採捕量とかけ離れていた場合、やはり「『未申告』のシラスウナギが多い」と見るべきだろう。


日本国内でのシラスウナギ漁が豊漁となった場合にはこうしたケースが頻発する可能性が高いが、いずれにしても毎シーズン、申告数量と採捕量の差異を県別に見定めていく必要がある。国は「日本国内の全体採捕量推計値」しか持っておらず、県別の採捕量は持っていないと思うが、どのようにチェックしていくか、今後も体制整備が必要となりそうだ。

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