• 小野 晶史

2021年5月号社説:シラスウナギ台湾輸出解禁でこう着状態脱却か/香港での談合に悩まされた時代の終焉期待も/今後は政府間取引によるクウォータ制導入検討へ

シラスウナギ漁がほぼ終了し、中国を若干残すだけで今シーズンの採捕もほぼ終了したが、今シーズンの採捕は日本・韓国以外で実績がまとまるなど、台湾と中国、特に中国福建省に集中した実績となった。次号で総括を掲載する予定だが、その前に今シーズンはシラスウナギで様々な話題が飛び出したと言える。


特に大きいのが日本からのシラスウナギの輸出解禁だろう。台湾が輸出を禁止して以来、日台のシラスウナギの貿易のあり方で正常化を模索してきたが、日本側が「誠意を見せる」意味からも率先してシラスウナギを台湾へ輸出、台湾側への配慮を見せたと言える。これに対して「様子を見る」としていた台湾サイドの動きがどうなるかだが、ここは日台両政府を始め、業界関係者が真摯な話し合いで詰める必要がある。待望の日台シラスウナギ貿易正常化を待ちたい。


これによりこの10年、うなぎ業界を悩ませ続けてきたシラスウナギの相場暴騰を抑制することができる可能性が高まっている。キロ400万円まで暴騰したシラスウナギの相場は言うまでもなく日本の輸入で香港一国からの貿易となったことで、容易に「談合」が成立してしまったことにある。投機的なブローカーの動きが加わり、業界とは何の関係もない業者との話し合いで香港で勝手に相場が決まり、その価格で日本がシラスウナギを買わざるを得ない事態を招いていた。この被害を直接的に受けていたのは早期の海外のシラスウナギを何としてでも仕入れなければならなかった日本のみ。台湾や中国はシーズン終盤までのんびりと需給を見ながら買付しており、「高ければ無理をして池入れしない」スタンスだったため、相場暴騰の影響を受けなかったし、現状の日台のシステムに対する不満もない。


日本のみが台湾との関係改善に努力せざるを得なかった状況が続いていたが、ようやくではあるが、改善に向けた明るい兆しが見えてきた。これによりシラスウナギの価格形成は安定化の方向に向かうと想定されるが、ここで安心してはならない。また不漁に見舞われた際に価格が暴騰しないように体制をより盤石なものとする必要がある。


そうした視点からの提案だが、シラスウナギの輸入でクウォータ制度を導入するべきではないだろうか。国家間取引で数量限定ではあるが、数量・金額を取り決めることで、日本が輸入した分のシラスウナギ・クロコウナギを海外、特に台湾に後で返すこともできる。台湾サイドに強く見られるシラスウナギの貿易での「不公平感」を取り除く効果も期待できるのではないだろうか。せっかく動き始めた流れを逃すことなく、しっかりと捉えてより良い方向に持っていけることを願いたい。

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