• 小野 晶史

2021年8月号社説:環境団体等は「絶滅危惧種」論から「シラスウナギの不適正流通」論へ鞍替え/少数派が多数派を支配する流れへの対応はーSDGs運動はいよいよニホンウナギへー

SDGsという言葉を聞かない日はない。持続可能な世界を追求する2015年9月に国連で採択された国際目標だが、「持続的でより良い世界を目指す」世界が合意したこの崇高な理念はCO2問題や再生可能エネルギー開発、プラスチックゴミなどを含めた環境問題、そして人種差別など様々な問題に向き合う国連加盟国の真剣な姿勢を表したもので、敬意を表する。


2030年までに目標を達成するという具体的なゴールも設定するこのSDGsは17のゴール、169のターゲットから構成されるが、「誰1人残さない」という完全性を前提としたものとなっているが、この内容が「一片の曇りも許さない」あまりに厳格なものであることから、世界への縛りは未だかつてない強烈なものとなりつつある。


特に、多数決で物事を決めない姿勢はこれまでの世界のスタンダードを変えていく可能性すらある。一部で独裁的な物事の決定がなされる可能性もあるこのムーブメントは一概に礼賛するのではなく、慎重に検証を進めながら「思い込み」や「雰囲気」で決定されることがないよう、「国際スタンダード」に翻弄されることなく各国での適正な姿勢の維持が求められる。


そのSDGsのムーブメントはとうとうウナギにも影響を及ぼし始めている。近年のニホンウナギの資源量調査で「ニホンウナギの資源は絶滅するような状態にはない」ことが明らかになりつつあるが、「ニホンウナギは絶滅危惧種である」と声高に叫んできた一部研究者と環境団体は「絶滅危惧種」としての観点からのニホンウナギを資金源とする切り口がなくなってきたことを受けてこのSDGsとしての切り口を最大限に活用したいようだ。


彼らの論法としてはシラスウナギ流通の多くが不適切で不透明」「ウナギは不透明な流通のもとに成り立っている」「不透明な流通のもとに成り立つウナギの流通は排除すべき」というものになる。シラスウナギの完全なトレーサビリティーを構築できないなら「履歴の明らかでない」加工品の流通も含めて排除するべきという業界としては到底受け入れ難い規制を課すことになる。


業界関係者の中には「そんなことできるわけはない」と高を括る意見もあるだろうが、この流れを決して甘く見てはいけない。クジラと同様に国際社会でウナギに全く関心のない国も巻き込んでの一方的な世論形成がなされ、「ウナギの流通は違法なもの」というイメージを作られると日本政府ですらその動きには抗うことができなくなる。そうならないようにするために業界は環境団体や研究者とどう戦うべきか、次号で述べてみたい。

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