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  • 執筆者の写真小野 晶史

ご挨拶

皆様、初めてお目にかかります


私はネット配信をメインとする水産養殖業界紙「アクアカルチャーレポート」を配信するアクアカルチャー株式会社の代表をしております。業界紙勤務を経て2012年に立ち上げまして、夫婦二人で細々と経営しております。水産養殖との関わりは既に20年を超えましたが、常に業界紙としての立場から水産養殖業に関する様々な情報を発信してきております。この度、ホームページを開設したこともあり、ブログも立ち上げ、皆様にご挨拶させていただきたく存じます。


昨今の水産養殖は世界規模で拡大しており、様々な水産物が海面、内水面の水域で養殖されており、世界を飢餓から救う牽引役となっています。日本の水産養殖業も長い歴史を持つ有数の養殖生産国ではありますが、世界の潮流とは少し方向性が違います。


日本はいうまでもなく魚食国家であり、EEZを含めたその領海も中国を超え、東アジア最大の447万㎢(世界第6位)に達する一大海洋国家です。東西南北の広大なエリアで水揚げされる多種多様な水産物は黒潮・親潮など南北から流れ込む様々な海流によって運ばれてきます。熱帯域から亜寒帯域まで有する日本の海域では海面、そして内水面において多様な種類の水産物が水揚げされ、日本の食卓を賑わせてきました。その食文化は2000年を超えるはるか昔から連綿と続いております。貝塚と呼ばれる遺跡からも日本人と水産物の密接な食文化の歴史の深さも明らかにされています。日本人は水産物とともに生きてきた民族であり、その食文化は非常に崇高なものと言えます。特に水生動物である魚類の命を食用として利用していることに対する強い思いから、常に魚の魂に敬意を払い、資源の保全のための放流を行うと共に、毎年供養まで行うほどに魚類の存在を敬ってきました。


日本には他国ではなかなかみられない特定の水産物の取り扱いを前面に押し出した「専門料理店」も存在します。ウナギやフグ、スッポン、ドジョウなどが筆頭株なのでしょうが、それ以外に寿司店もある意味マグロの専門店ともいえるでしょう。また、地方には様々な専門料理店があり、地元で取れる水産物をメインに様々な料理を提供、食文化を守る基幹的な役割を果たしてきております。ただ、天然魚に依存するシステムでは資源枯渇を招きますし、漁獲量の多寡で相場が乱高下します。前出の専門店向けの安定供給は無論、スーパーで販売される鮮魚関係でも安定した数量・価格での水産物の供給を続ける意味でも養殖のニーズは非常に大きいと言えます。


日本の水産養殖業はそうしたニーズを満たす意味で存在意義は非常に大きいと言えます。他国での水産養殖は食糧の確保という意味での役割が非常に大きく、高級魚の養殖は積極的には行われていません。付加価値をつけた高単価商材よりも安価で大量生産できる魚への思考が強いため、日本の養殖業に対して数量面での違いは鮮明です。日本は食文化の維持承継のための水産養殖であることが優先されるため、高単価商材の養殖が非常に多く見られます。コストでキロ1000円を下回る魚の養殖はサーモンやニジマスなどですが、決して多くなく、大半はクロマグロやクルマエビ、ウナギ、トラフグ、カキ、アユ、ヒラメ、カンパチなどの高コストの商材と言えます。このため、日本が輸入する水産物の規格は厳しく、海外で大量に生産される魚がいくら安くても日本には積極的に輸入されません。比較的大量に輸入される養殖水産物はウナギやサーモン、ブラックタイガー、クロマグロなど比較的量販される魚と言えるでしょう。


海外の水産養殖とは違った発展を遂げてきた日本の水産養殖はある意味ガラパゴス化しているとも言えるでしょう。しかし、日本の魚食文化を見渡せば世界で随一の多彩な魚食文化を持っているということもできます。刺身などの生食文化だけでなく、踊り食いなどの活魚での食文化に加え、フグのような毒を持つ魚までを食文化として消費、日本でしかない水産物の消費形態が存在しますし、世界中の様々な高級魚・養殖魚を輸入、日本の食文化の中に組み込んで消費していく等、その懐の深さもあります。そうした日本の食文化を支える日本の水産養殖業は世界中でも唯一無二の存在であり、本紙ではそうした視点の下、日本の水産養殖魚の現状を捉えつつ、取材の主要対象魚であるウナギ、フグ、アユ、ニジマス、スッポン、ドジョウを軸に様々な記事を掲載してきております。


このブログでは私が日々考えていることなどをおりをみて書いていきたいと思います。水産養殖に関わる話題が多いかと思いますが、それ以外に私の趣味であるフルマラソン、そしてオペラ(特にリヒャルト・ワーグナー)などの音楽ネタなども含め本紙の紙面で書くことのないことを綴っていきたいと思います。


今後ともよろしくお願いいたします。


小野 晶史


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