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  • 執筆者の写真小野 晶史

絶滅危惧種としてのウナギについて思うこと

ウナギが絶滅危惧種として取り扱われるようになって久しい。


ニホンウナギ、アメリカウナギ、ヨーロッパウナギなどを始めとして様々な種類のウナギ が資源保全が急がれる状態にあり、ニホンウナギやヨーロッパウナギ では食べることすら厭われるような世論が形成されており、多くのメディアも「食べるな」の大合唱を繰り広げてきた。


特にヨーロッパウナギ については2009年に国際自然保護連合により「絶滅寸前」というカテゴリーにまで追い込まれた。絶滅危惧種入りを待たずに2007年にワシントン条約の附属書に記載され、長きにわたり国際貿易の規制が課せられ、今でも継続している。ニホンウナギも未だにワシントン条約での附属書掲載で議論が紛糾する状況にある。


ただ、ウナギの絶滅危惧種としての議論はそんなに簡単なものではない。採捕量が長期間にわたり激減していたヨーロッパウナギは別としても、ニホンウナギには資源量に関するきちんとした議論がなされないままに絶滅危惧種の認定が実現してしまったことは非常に残念だ。


ただ、こうした性急な絶滅危惧種指定にはやむを得ない側面もある。そもそもニホンウナギの絶滅危惧種としての議論が過熱化したのは2009年冬から2012年冬の4シーズンにかけてシラスウナギ採捕量が減少し続けたことにある。それまではシラスウナギ漁は長くても3年連続の不漁止まりだったが、この時の4年目の不漁には誰もが懸念を抱いた。「親が産卵場に戻っていない可能性がある」という思いから、研究者も含めて不安にかられ、資源枯渇の可能性を指摘、データも揃わないままに「予防原則」の考え方から絶滅危惧種に認定させてしまった。


ニホンウナギの資源量の研究はそれまでほとんど行われていない。ウナギ研究の旗手であった某教授(既に退官されているが…)も元々は「緩やかに減少しているが絶滅はしないでしょう」と言われていた。シラスウナギ、天然ウナギの漁獲量・資源量データも揃わない状態で絶滅危惧種に指定することの危うさも感じていたのだろう。無論、私も同意していた。


ただ、2013年に入り、「予防原則」の原理を掲げ、ニホンウナギまでもが国際自然保護連合のレッドリストに掲載に入ってしまった。資源量に関する研究や議論は後回しにされた感も強く、「かもしれない」という感情論が先頭を切っていたように思う。資源量の調査が十分にできていなかったことで、研究者による「思い込み」ばかりが先行し、業界を混乱の渦に巻き込んだ。


何よりも残念なのはその後の「絶滅する」「食べるな」の主張ばかりが飛び交い、資源量の研究が進まなかった。「絶滅しない」ことを主張する業界関係者・研究者もいたし、その論拠となる論文も発表されるなど、「食べながら資源保全できる」状況にあることを感じさせたが、魔女狩りのようにそうした言論は研究者や活動家から封殺され、「絶滅危惧種」ありきの話が続いていた。


そうした状況はおかしいと思い、本紙でも「絶滅危惧種」問題が顕在化してから資源量の調査・取材を独自に行ってきた。(次号)


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