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  • 執筆者の写真小野 晶史

2020年11月号社説:自分の言葉の間違いに責任を持つメディアであるべき/間違いを再検証しないジャーナリストの存在価値とは─ 昨今の大手メディアの情報発信について思うこと ─

昨今は情報が氾濫、玉石混合の状況で情報の受け取り手である人々は日々翻弄されている。そうした状況下で情報を提供する立場として新聞社・テレビ局などの大手マスメディアはその信頼の大きさからも一般消費者にとって重要な判断基準とならなければならないし、多くの一般読者・視聴者から受けている信頼を決して裏切ってはならない。


ただ、今年は新型コロナウィルス感染拡大に端を発し、様々な情報が飛び交う。アメリカ大統領選挙、そして大阪都構想の住民投票など、情報が重要とされる場面がいつになく多かったように思われる。


そうした状況下で大手マスメディアの役割は非常に大きい。大阪都構想をかけた住民投票では直前に某新聞社が掲載した記事を発端にして都構想が頓挫したと言われる場面も見られた。


アメリカ大統領選挙でもネガティブキャンペーンで両候補は裏付けのないままに双方の疑惑をとりあげ、非難し、貶める行為を繰り返す。そこに大手メディアも参戦し、何が本当かわからないカオスの状態を引き起こしてしまう。


ましてや新型コロナウィルス感染拡大は言わずもがなだ。医療関係者ですらその実態がわからない新型コロナウィルスのことについて、多くのメディアが結論ありきの論調で様々な情報を意図的に流してしまう。


ここではその是非を問うことはしないが、問題は大手中小かかわらず、マスメディアである以上、情報には責任を持たなければならない。人間であるのだから間違えることは仕方ないと思うが、なぜ間違えたのか、何が正しかったのかを視聴者・読者に伝えなければマスメディアとしての存在価値はない。


大阪都構想の可否を問う住民投票では様々な情報のもとに賛成派、反対派がお互い貶めあったが、そういう場面で垂れ流された様々な情報が正しかったかどうかは情報を発信した本人がきちんと再検証していく必要がある。自分で発言したことは自分で責任を持つと言うジャーナリストの当然の責務を行使できなければペンを持つ資格はない。


間違いのある自分の記事が世の中をミスリードしてしまうと言うことは非常に重い罪だ。その罪を犯してしまったら、それなりの覚悟を持って再検証し、なぜそんな記事を書くに至ったか、間違いに気づかなかったかを読者に伝え、謝罪する必要がある。これはマスメディアだけでなく研究者にも言えることだろう。学者の論文に対する一般の信頼も同様に非常に大きく、その影響力は計り知れないものがある。研究者の肩書で発信した言葉に間違いがあった場合も含めてもっと自省の気持ちを持っていくべきではないか。

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