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2020年5月号社説:生産者と料理人の保護は食文化政策の両輪

  • 執筆者の写真: 小野 晶史
    小野 晶史
  • 2020年5月15日
  • 読了時間: 2分

今年に入り世界中を混乱の渦に陥れた新型コロナウィルス感染のアウトブレイクは欧米からアジアまで甚大な被害を引き起こし、経済の急速な後退を招いてしまった。ここからの経済回復は民間の力だけでは足りないことは言うまでもない。政府の強力なテコ入れでよりスピードアップした回復策が求められよう。


また、こうした災害の後に大切なのは課題点、反省点を躊躇なく列挙し、今後同様の災害が起きた時の被害を少しでも軽減できるようにすることにある。責任問題の論争も良いが、「もっとこうすべきだった」「今後はこうあるべきだ」という議論の方がより建設的であり、発展性を持つことができると言えよう。


そうした視点を踏まえ、食品業界全体がよく考えなければならないことがある。日本の食糧政策では常に生産・供給の面が重要視され、生産者の保護が重点的に行われてきたが、これからは様々な観点から飲食店に対する保護もよく考えていく必要がある。


これまでも何度となく業界内でも議論されてきたことだが生産者として農業者、畜産業者、漁業・養殖業者等は手厚く保護されてきているにもかかわらず、肝心の料理店にはそうした対策は殆ど取られてきていなかった。これに対し、料理店店主たちの間でも問題視する意見がたびたび聞かれていた。


しかしながら料理店内に燻る「必要ない」という考え方も後押ししたのだろう。無理をして行政の保護を受けなくても「自分たちで十分やっていける」という考え方もあり、結果的に料理店保護に対する取り組みは進んでこなかった。


料理店には専門店や高級割烹を始め、長い歴史を持つお店が数多く存在するが、農家や漁業者、養殖業者と同様に小規模経営体が多く、大手企業の介在は極めて少ない。小規模経営体の方々に有事の際に自分の身を自分で守れというのは酷ではないか。


優秀な生産者がいないと食文化も守ることはできなくなるが、優秀な料理人がいなくなることも同様だ。生産者と料理人のどちらかが事業を継続できなくなれば中間の加工業者・流通業者・市場業者も廃業するしかない。生産者や料理人の被害の後には関係先へのさらなる二次被害が待っていることをよく理解しなければならない。


生産者保護と料理人保護は食文化の保護の取り組みにおいて両輪であるということは今回のコロナ被害で国民も肌身に感じたように思う。今後、食文化振興の施策は新たなフェーズに入るべきだろうし、料理店、そして料理人を守るにはどうすれば良いのか、問題点を話し合っていく必要があるだろう。


 
 
 

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