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2025年12月号社説:ニホンウナギ「絶滅危惧種」論の基盤は極めて脆弱誤った資源評価は取り下げ、資源量を再評価すべき─ ワシントン条約第20回締約国会議での否決で思うこと ─

  • 執筆者の写真: 小野 晶史
    小野 晶史
  • 2025年12月16日
  • 読了時間: 3分

ワシントン条約第20 回締約国会議で欧州政府により提案されたウナギ属魚類全ての附属書Ⅱ掲載案だが、27 日の委員会評決で大量の票差で否決された。5日の本会議でもこの否決が承認され、正式に否決された。

今回の提案採決までには掲載推進派が声高に持論を発信し続けてきた。ウナギを絶滅危惧種と言って憚らず、食文化そのものを無くしてしまわなければウナギが絶滅するという杜撰で大雑把な意見なのだが、この動きに抗えなかったヨーロッパのウナギの食文化は衰退した。本来であれば戦う姿勢を見せるべきだっただろう。そうしていれば食文化の衰退という深刻な事態を回避できたと思う。

そもそもヨーロッパウナギ、ニホンウナギ、アメリカウナギが絶滅危惧種であるという論の基盤は極めて脆弱だ。当然である。資源量調査をしないままに、いい加減な漁獲統計を根拠としたのだから、本当に絶滅するのかわかっていない。

ヨーロッパの研究者はそうした事実をよくわかっているのか、規制開始から16 年を経ているが、資源量の調査・査定を行なわない。資源量の見直しはウナギのライフサイクルを超えたあたりで行うことが定石だが、6〜8年でライフサイクルを終えるウナギの見直しは一向に行われない。

クジラ同様に資源量から目を背け、絶滅危惧種としておきたい研究者の思惑が透けて見える。日本で率先して附属書掲載を要望してきた研究者たちは資源量に関する十分な研究しないまま、一方的にIUU 漁業を理由に附属書掲載を求めてきた。

思考停止状態に陥った一部の研究者・記者たちが、今回の否決により振り出しに戻されたものの、またもや「絶滅危惧種論」を振り翳す。「ニホンウナギは間違いなく絶滅危惧種である」とまで言い切る一方で、新たな資源調査を行うような声は聞かれない。

しかも、今回の評決で大きな援護射撃となった数理解析による資源量調査を否定する。数理解析では十分なニホンウナギの資源があり、「絶滅するリスクは低い」と言われているが、「目の上のたんこぶ」であるこの論文について、きちんと検証しないままにあたかも不正なデータでもあるかのように断じる。いずれにしても資源量調査をしっかりと行ない、誤った資源評価は取り下げ、正しい資源評価による保全活動を進めていくべきだ。

ヨーロッパウナギは「絶滅寸前」のカテゴリーに入れられたが、資源は枯渇するどころか回復した。ニホンウナギは豊富な資源量を擁し、資源が枯渇しかけた事例は確認されていない。ヨーロッパウナギとアメリカウナギは貿易数量が急増しているデータはどこにも存在しない。一体何のための規制なのか、今一度考えるべきではないか。

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